
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
2026年の立夏(りっか)は5月5日から5月20日。夏の兆しが見え始める頃なので「立夏」です。
「立」という漢字は「人が両足をそろえて大地に立つ」ことをあらわした字で、「しっかり地面に足場や根拠を定めて安定する」というイメージもあらわすそうです。立夏の直前の穀雨はまさに「春から夏への変化の期間」でした。その変化の時季を抜けて「夏という季節がしっかり足場を定めて安定する」という意味が込められた暦の名前にも感じられます。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
立夏の時季。ここ熊本では「夏らしい」ものが旬を迎えています

暦の上では「夏」が始まりました。4月中旬を過ぎた頃から、熊本では「春すいか」がスーパーの青果コーナーに並び始めますが、GWを迎える5月初旬には「熊本のすいかの旬」がやってきます。「夏の風物詩が5月に旬を迎える」ことはとても早いな…と思ったこともありましたが、「5月初旬の暦が夏の始まりの立夏」と知ると不思議と腑に落ちる感覚で、「なるほど、暦通りだ。」と感じたことを覚えています。
さくら・つつじが咲き終わった5月の再春館HILLTOPは“バラ”が見ごろを迎えます。毎年、大きく立派に咲くバラの花を目にすると、「いよいよ新緑の5月が始まるのだな」と季節の移り変わりを実感します。
中医学では“バラ”と言うと「玫瑰花(まいかいか)」が想起されます。日本のハマナスの近縁種と言われますが、「血」への働きかけに優れる植物として中医婦人科では頻繁に使われます。「いつか本場の玫瑰花の生育を見てみたい」と、日本のバラを目の前にしながら思ったりもしました。
「土用の丑」は知っているけど……「土用」とはいったい何?
さて、先ほど「立夏の直前の穀雨はまさに春から夏への変化の期間」と書かせていただきました。この期間は「春の終わり」にあたり、「春土用」と言います。
日本には“四季”がありますので、それぞれの季節の変わり目にあたる約18日間を「変化の期間=土用(どよう)」と言い、脾の機能(=消化機能)をケアしましょうという期間になります。1年を見渡すと、立春、立夏、立秋、立冬に入る直前のそれぞれ約18日間が「土用」です。
そして、「夏の始まり」とお伝えしました。ほんの少し前まで春を過ごしてきた身体なので、良くも悪くも春の状態が続いています。毎日の生活環境的にも、中医学での身体の解釈的にも、「春はストレスの影響が身体に響きやすい季節」です。春の影響を残さない夏の始まりにしてみませんか。
次ページ▶夏の前に「やっておくべきこと」とは
ストレスの影響が身体に響きやすい時季です。その影響を残していると夏場に起きることが…
さくらが咲く4月の初旬の迎え方は人それぞれですが、新年度・新学期・新生活…と4月に入って生活環境に変化があった方は、その状態に入ってから約1ヶ月になります。思い通りにならない様々なことがきっかけとなる生活環境的なストレスは、中医学的な解釈で表現すると、身体の中で“肝”の機能が一手に引き受けています。
「肝」は伸びやかな状態を好み、枝葉のようにすくすく伸びることを好む性格とも表現できるので、春の到来とともに動き出したくなります。一方で春という季節は、寒い冬から暑い夏に向けた季節の移り変わりのちょうど途中地点です。「暑い季節」「寒い季節」と夏や冬の過ごし方は比較的イメージしやすいですが、春は気温上昇の経路。上下幅が毎年異なり、「今年も去年と同様にすれば良い」となりにくいため、身体にとって適応しにくい季節とも言えます。
“肝”の機能にとって、「伸びやかに動きたい」春でもあり、「気温上昇のゆらぎのために適応しにくい」春でもある。そんなタイミングに「春の生活環境的ストレス」が肝の機能に押し寄せると、肝のストレス許容量を超えてしまいます。
これは中医学独特のイメージの仕方ではありますが、イライラを受け止める肝の機能の許容量を超えてしまうと、肝に熱がこもり、やがて火がつき、煙が上がってしまうイメージします。その煙は頭部に充満して、煙は抜ける穴を探します。その穴が耳であれば耳鳴りが、目であればめまいや疲れ目や、目が赤くなるなどのあらわれが起きやすい、とイメージします。
前の季節のダメージを残したまま次の季節に進んでしまうと、身体が整わないまま次の季節を迎えてしまうこととなり、不調を感じやすくなってしまいます。
夏の始まりの「立夏」の期間にはGWという休日があります。今いらっしゃるそれぞれの環境によって休みの日数は異なりますが、「新年度に入ってから1ヶ月目の小休止」「春から夏に季節が移った一区切り」「春の影響を夏に持ち越さないメッセージの“春土用”明け」でもあります。季節の変化に身体が適応できるように、身体の内側からの働きかけである「食べ物」のおススメをお話しさせていただきます。
次ページ▶おすすめレシピ1つめは「組み合わせ」で魅力を発揮
これこそが「組み合わせの妙」。この時季に必ず食べてほしいストーリーがある「いわしとししとうの甘露煮」

“肝・脾の機能にうれしい食材”でおススメなのは、いわし、ししとう、生姜、梅、じゃがいも、たまご、豆乳、はちみつ、ふき、みりんなどが挙がります。
これらの“肝・脾の機能にうれしい食材”を使ったおススメレシピの1つ目は「いわしとししとうの甘露煮」です。いわしにはいくつか種類がありますが、真いわしは初夏から旬になると言われています。そういえば、以前ひらめ釣りに行った際に小さないわしを餌としていましたが、ちょうど梅雨時でした。いわしには立夏のこの時季の身体に嬉しい効能がしっかりあるので、おススメレシピにしてみました。
作り方は、いわし(4匹)は頭と内臓を取って水で洗います。ししとう(6本)は洗った後、側面に切れ目を入れます。生姜(1片)は千切りに、梅(大1個)は種を取り除いて刻みます。梅は真っ赤な梅干しでも良いですし、塩分を控えたい場合ははちみつ漬けの梅干しでも良いです。
フライパンに酒(大さじ2)・みりん(大さじ2)・きび砂糖(大さじ3)・水(大さじ2)を入れ、いわしを並べた上から生姜・梅肉を入れて、落し蓋をして15分ほど弱火で煮ます。その後にししとうを入れ、約1分後にりんご酢(大さじ1)を加えて火を止めます。器に盛りつけた後、煮詰めた煮汁を上からかけたら出来上がりです。
これから旬になるいわしは「身体に気と血を補って、身体の血のめぐりを良くして食欲を促し、目の疲れを改善して、精神を安定させる」働きが、ししとうは「身体の血のめぐりを良くして、食欲を促し、目の疲れを改善させる」働きが期待できます。つい先日までの“春土用”でケアをしたかった脾の機能(=消化機能)に「食欲を促進させる」という働きかけを共通して行ってくれますが、「目の疲れを改善する」という効能も期待できます。
先ほど少し触れましたが、「肝に火がついて立ちのぼった煙は目から抜ける…」なんてお話をさせていただきました。いわしとししとうは甘露煮で普通に見かける食材のペアですが、紐解くと効能にスポットを当てると「ペアになるべきストーリー」が見えてきたりします。
一緒に合わせた生姜は「おなかを温めて胃のコンディションを良くする」働きが、梅肉は「身体の水分のめぐりを良くして、おなかのコンディションを整える」働きが期待できます。どちらも“脾”の機能に働きかけるサポート食材ですね。
レシピを構成する食材としては4種類ですが、「それぞれの効能を組み合わせた際のストーリーが“夏の始まりの立夏”にとてもピッタリ」と感じたので、おススメレシピにして紹介させていただきました。
次ページ▶2つめレシピは本当に驚く「あの素材」のプリン
意外すぎる組み合わせに驚きしかない「ふきシロップのじゃがいもプリン」

2つ目も肝・脾の機能を補うレシピとして「ふきシロップのじゃがいもプリン」を紹介します。春野菜の“ふき”を店頭で見かけなくなったと思っていたのですが、道の駅で偶然目にすることが出来ました。「おひたし」で味わうことが出来るふきの食感を他のレシピにも広げてみたい…と思案していたら、意外なことにスイーツになってしまいました。そんな食べ方をおススメレシピとして紹介します。
作り方は、まず“ふきシロップ”を作ります。ふき(3本)を鍋に入る長さに切り、浸る程度のお湯で約10分間湯がいて水で冷ました後、皮をむかずに細かく切ります。これをボウルで水に浸して、冷蔵庫に入れて一晩以上アク抜きをします。アク抜きをしたふきをキッチンペーパーで包んで水気を取ってフライパンに入れて、みりん(100ml)を加えて煮詰めます。
次に“じゃがいもプリン”を作ります。ボウルにたまご(2個)を入れて、泡だて器でよく溶きほぐします。じゃがいも(中2個)は皮をむいてすりおろし、塩(小さじ1/4)を加えます。鍋に豆乳(200ml)を入れて一煮立ちさせて、たまごのボウルにじゃがいものすりおろし・豆乳・はちみつ(大さじ3)を入れて混ぜ合わせます。これをココットに入れて、アルミホイルでフタをします。
ふきんを置いたフライパンにココットを乗せて、底から2cm程度の高さまでお湯を注ぎます。フライパンのフタをして、弱火で15分加熱し、火を消して10分置きます。
ココットからアルミホイルを外して、上から“ふきシロップ”をかけたら出来上がりです。
じゃがいもは「身体に気を補って、食欲を促す」働きが、たまごは「身体に血を補って、精神のバランスを整える」働きが、豆乳は「身体の水分のめぐりを良くして、食欲を促す」働きが、はちみつは「おなかのバランスを整える」働きが期待できます。“じゃがいもプリン”を構成するこの4つの食材が合わさることで「身体の気・血・水分に影響して、食欲を促す」働きが期待できるようになります。プリンだけでもおなかには優しい食材の組み合わせですが、“じゃがいも”を足すとより消化機能(=脾の機能)に働きかけられるようになるのでおススメです。
ふきは「身体の血のめぐりを良くして、食欲を促す」働きが、みりんは「食欲を促す」働きが期待できます。スイーツなので甘味が必要なのですが、砂糖は極力控えたいと思い、みりんを煮詰めたシロップをふきに絡ませてみました。
みりんシロップの甘味を感じながら“ふき”のシャキッとした食感を味わい、プリンのなめらかな食感を味わいながら“すりおろしじゃがいも”のほんのりした塩味が感じられる。少し変わったレシピですが、夏の始まりを迎えてしまった脾の機能(=消化機能)には嬉しい蒸し料理で作る“やさしい味”のプリンになりました。
暦の上では夏が始まりましたが、まだまだ始まったばかりです。暑さが増す前に「春の影響のケア」をしてしまいましょう。
連載中の「田野岡メソッド」が書籍になりました!
「身近にある旬の食べ物が、いちばんのご自愛です!」 田野岡メソッド連載で繰り返し語られるこのメッセージが、1冊の書籍にまとまりました。近所のスーパーで手に入る身近な食材を使い、更年期をはじめとする女性の不調を軽減する「薬膳」を日常化しませんか?
日本の漢方では「その症状に処方する漢方薬」が機械的に決められていますが、本来の中医学では症状と原因は人それぞれと捉えます。それに合わせた効果的な食事を「薬膳」とし、食で養生するのが基本なのです。
田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!




