
こんにちは、心理学者の内藤誼人です。働く女性の皆さんに、仕事、家庭、自分時間の3つの視点から、「知っておくと人生がスムーズに動き出す」心理学の知恵をお伝えしています。
前編『「子どもが宿題をしない」理由って考えたことはある?原因から逆算すれば「たったこれだけのこと」で自分から動くようになる』に続く後編です。
【心理学者が教える「8割がんばらない」生き方】#4後編
やはり「ながら」はよろしくないのです。ひとつのことに集中させる訓練を
「ながら学習」という勉強法(?)があります。テレビを見ながら、音楽を聴きながら、お菓子を食べながら、だれかとおしゃべりしながら勉強をするので、そういう名前で呼ばれています。
けれども、こういうやり方は勉強法としてはよくありません。目の前の宿題に集中できなくなってしまうからです。意識があちこちに分散してしまって、余計に宿題の時間がかかるだけです。子どもに宿題をやらせるのなら宿題に集中できるよう、「○○しながら」やらないようにしてください。そのほうがさっさと宿題も片づきますし、子どもは好きなことをして遊ぶ時間が増えます。
オランダ・ライデン大学のマリナ・プールは、160名の高校生に宿題をしてもらうときに、いろいろな「ながら学習」をさせ、終わらせるのにかかる時間の記録をとってもらいました。すると、次のような結果になったそうです。
次ページ>>>意外すぎる…その結果とは
ながら学習vsながらなし 結果は?
ながら学習 かかった時間
メロドラマを見ながら 40.43分
音楽ビデオを見ながら 35.03分
ラジオを聞きながら 36.05分
「ながら」ナシ 33.08分
数値を見れば「ながら学習」の非効率さがよくわかりますね。宿題をやらせるのなら、他のことをさせずに宿題だけをやらせたほうが集中できますし、ホイホイと片づけることができるのです。
マルチタスクは決して有能ではない。むしろミスが倍に増えて効率が悪い
みなさんは「マルチタスク」という言葉をご存知でしょうか。複数の(マルチ)仕事(タスク)を同時進行するという仕事術なのですが、同じ理由でこれもダメです。
何となく「マルチタスクをやっている人ほど仕事ができるイメージ」はありますが、現実にはひとつずつ仕事を片づけてゆく「シングルタスク」派の人のほうが、効率よく仕事をこなせるものです。
米ユタ大学のデビッド・ストレイヤーは、シングルタスクとマルチタスクを実験的に比較検証してみましたが、シングルタスクのときには2、3パーセントだった作業のミスが、マルチタスクにすると約7%に増えてしまうという結果を得ています。
子どもに宿題をやらせるときには宿題だけに集中させたほうがよいのですが、大人のみなさんも仕事をするときには、ひとつずつ片づけたほうが結局は早く終わらせることができる、ということを覚えておくとよいかもしれませんね。
次ページ>>>宿題の量と成績が関係する「たったひとつの科目」とは?その他はどう宿題と付き合えばいい?
数学は成績と宿題量が関連するが、その他は微妙? あえて「手を抜かせる」のもアリかもしれない
学校の先生は、生徒のためを思って宿題を出しているわけですが、すべての宿題が素晴らしい宿題なのかというと、実際には「そうでもない」ことが多々あります。ただ子どもの時間を奪うだけという、やっても役に立たない宿題というものはあります。しかも、調べてみるとそういう宿題はけっこう多いようなのです。
米ネバダ大学のオズカン・エレンは、1032の学校でのべ2万54人の中学生を対象に、1週間分の宿題と、科目ごとの成績との関連性を調べてみました。
その結果、宿題が一番多いのは数学でしたが、数学の宿題は、数学のテストの成績に大きな影響を及ぼしていました。つまり、数学の宿題は大いに意味がある、ということです。
ところが、科学、英語、歴史については宿題の量と科目の成績にはまったく何の関連性も見られませんでした。一生懸命に宿題に取り組んでも、残念ながら成績が伸びるという保証がまったくないということです。
この結果をもとに、エレンは数学以外の宿題は、子どもの自由時間を奪い、負担を与えるだけではないか、と宿題そのものに疑問を呈しています。大変なだけで、やっても意味がない宿題というものはあります。したがって、そういう宿題まで熱心にやらせなくともよいのではないでしょうか。
宿題は宿題として、とりあえずは子どもにやらせても、ほどほどというか、適当に手を抜いてもいいよ、ということくらいは認めてあげてもよい気がします。もちろん、数学だけは別ですよ。数学の宿題はやればやるほど成績も伸びますから。
いつでも厳しくしていたら、子どももイヤになってしまいます。たまには親のほうから、「今日の宿題はちょっとだけサボっちゃおう」とか「ネットで答えを探しちゃおう」と悪いことを提案してみてください。子どもは、こういう悪さが大好きですし、“共犯意識”のようなものが芽生えて親子の絆が強化されるかもしれませんね。
つづき>>>「子どもが宿題をしない」理由って考えたことはある?原因から逆算すれば「たったこれだけのこと」で自分から動くようになる
(出典)
Eren, O., & Henderson, D. J. 2011 Are we wasting our children’s time by giving them more homework? Economics of Education Review ,30, 950-961.
Pool, M. M., Koolstra, C. M., & Voort, T. H. A. V. 2003 The impact of background radio and television on high school students homework performance. Journal of Communication, 53, 74-87.
Strayer, D. L. & Johnston, W. A. 2001 Driven to distraction: Dual-task studies of simulated driving and conversing on a cellular telephone. Psychological Science ,12, 462-466.
Yeager, D. S., Henderson, M. D., Paunesku, D., Walton, G. M., D’Mello, S., Spitzer, B. J., & Duckworth, A. L. 2014 Boring but important: A self-transcendent purpose for learning fosters academic self-regulation. Journal of Personality and Social Psychology ,107, 559-580.

お話/内藤誼人先生
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役。社会心理学の知見をベースに、ビジネスシーンを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。動物の飼育が趣味で、最近は人間よりも動物に好かれており、自然を愛するナチュラリストでもある。著書に、『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』(総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。



