
「周りは結婚して子どももいるのに、自分だけ取り残されている気がする」「夫婦なのに会話がなく、このままでいいのかわからない」。人生の節目や身近な人との関係に、不安や焦りを感じる人も多いのではないでしょうか。
精神科医のTomy先生は、「理想の人生」は誰かが決めるものではなく、自分が納得できる選択をすることが大切だと語ります。また、夫婦なのにすれ違いが続いてしまう理由についても、精神医学の視点からわかりやすく解説しています。
本記事では、Tomy先生の著書から、人生の焦りや夫婦関係に振り回されず、自分らしく生きるための考え方をご紹介します。
※本記事は書籍『うつ未満 。 「大丈夫」と言えない日の相談室』(精神科医Tomy)から一部抜粋・編集したものです
周りはどんどん進んでいくのに、私だけ立ち止まったまま
Q.結婚もキャリアも中途半端。30代の「宙ぶらりん」地獄
(30〜39歳/女性/Kurumiさん)
このまま独身で生きていくのか、漠然とした不安に襲われる。結婚願望はあるけど、出会いがない。マッチングアプリも疲れた。
仕事は安定しているけど、やりがいは感じない。40歳、50歳になった自分が想像できない。親の介護問題も他人事じゃない。一人で老後を迎える覚悟なんてできていない。
かといって、焦って結婚するのも違う気がする。キャリアアップしたいけど、今更感もある。友人は次々と人生のステージを進んでいくのに、自分だけ停滞している気持ちが強い。
「人生100年時代」と言われても、あと70年近くどう生きればいいのか。貯金も少ないし、年金も期待できない。
せめて健康でいたいけど、このままじゃ病んでしまいそう。この先の人生に希望が持てないけど、諦めるには早すぎる年齢。
宙ぶらりんな状態が一番辛い。Tomy先生、人生の方向性が見えない30代が、一歩を踏み出すアドバイスをください。
「ネコみたいな人生」だって、幸せなら大正解
A.「理想の人生」なんて、SNSが作った幻想よ
人生の方向性なんてね、ぶっちゃけ幻想ですよ。「この生き方が王道、正解」なんていうのはないのよ。
仮に、結婚して、子供を産んで、キャリアアップして、「理想的」と一般に言われるようなコースを歩んだとしても、それがアナタのやりたいことじゃなかったら意味ないわよね。
そんな人生でも「やりたくない人生」なんだから。
で、もし一生独身で、日がな暮らしで、ネコみたいな人生だったとしても、それがやりたい人生なら幸せでしょ。だから結局は「自分がどうしたいか」なんですよ。
それがわからないまま一歩踏み出しても、遭難への第一歩になるだけよね。
でもまあ、そんな気持ちになるのもわかるわ。今まで「こういう生き方が理想」という情報が、メディアやSNSで盛んに喧伝されているわけだから。でもそれは、アナタを幸せにはしません。
「結婚しなきゃ」という焦りこそが不幸の元
というわけで、「自分が納得する人生を歩めるかどうか」。つまり、これも自分軸の話なんですよ。
自分が納得していれば、60年でも100年でも満足。そうじゃなければ100年生きても不満足。そういう話。だからアナタが今どうしたいかが大切なんじゃないの?
どうしても結婚したいのなら、結婚する。そうじゃないのなら、そのまま。多分、「結婚しなきゃいけない気がする」って、なんとなく思って焦ってるだけでしょ。
それは本当に結婚したいわけじゃないんじゃない?そんな気持ちで結婚しても、別に幸せにはならないわよ。
もちろん、子供がほしいのなら早く結婚したほうがいいけど、「どうしても子供がほしい」って思ってないのなら慌てなくてもいい。
どんな選択肢にもメリットとデメリットがあるから。デメリットを後悔しない方法は、「自分が納得した選択肢を選ぶこと」。それだけだからね。
【Tomy先生のアドバイス】
「正解の生き方」なんてない。全部幻想よ。 ネコみたいに気ままに生きるのも、立派な幸せ。 焦って結婚しても遭難するだけ。自分の本音を聞いて。
▶会話なし、レス1年以上――「危機的」夫婦関係を修復するには?
喧嘩すら起きない「無関心」が、心を冷やしていく
Q.会話なし、レス1年以上。夫婦なのに「他人」より遠い
(30〜39歳/女性/おでんさん)
結婚3年目、夫との会話が減った。仕事から帰っても「お疲れ」「ご飯ある?」だけ。休日も別々に過ごすことが増えた。レスも1年以上続いている。夫は口数も少なく、何を考えているかわからない。
子供の話が出ても「まだいいんじゃない?」と流されてしまう。もはや子供が欲しいのか、自分でもわからない。
義母からは「孫はもうちょっとかかりそう?」とプレッシャー。友人夫婦は幸せそうに見えて、比べてしまう。離婚するほどの理由はないけど、このまま一緒にいる意味も見出せない。
夫の好きだったところも忘れてしまい、自己嫌悪。診療に行くほどじゃないと思うけど、この停滞した関係をどうすればいいのか。
仕事のストレスを家庭に持ち込んでいる自覚はあるけど、改善できない。Tomy先生、愛情が冷めたわけではないのに心が離れていく夫婦関係を、どう修復すればいいですか?
「会話がない」のではなく、意志を持って「していない」だけ
A.「好き」の反対は嫌いじゃなくて「無関心」よ
ごめんなさい。結構危機的状況かもしれないなと思っちゃいました。一緒にいる意味って、探すものではなくて、ただ感じるもの。
お話を聞く限りだと、二人の間に流れているのは無関心。好きの反対は嫌いじゃありません。無関心なの。
まだ毎日お互い好き勝手言い合って、喧嘩ばかりしているほうがいいわよね、とすら思うのよ。
だって「怒り」っていうのはね、相手に「わかってほしい」「変わってほしい」というエネルギーのぶつかり合いでしょ?
形は歪んでいても、それはまだ相手への希望という「愛」が残っている証拠よ。でも無関心は「どうでもいい」という冷徹な放棄。そこにはエネルギーはおろか、愛の欠片もない真空状態があるだけなの。
「愛情が冷めたわけではない」とおっしゃるけれど、今の状態は冷めかけている可能性があるのではないかしら。そして、それすら認めたくない気持ちがあるのではないかしら。
ではここからどうしたらいいか。まずはコミュニケーションよ。
コミュニケーションって、無関心だと取らなくなる。そして取らなくなると無関心になる。それがスパイラルのように続いて、本当に冷めてしまうのよ。
逆に言えば、コミュニケーションを取ると、お互いへの興味が増す。興味が増すとコミュニケーションが増える。そういうスパイラルも作れるということです。
「共体験」がコミュニケーションの着火剤になる
というわけで、会話をするべき。会話って、勝手になくなるものじゃない。会話していないのよ。自分の意志で会話をやめているの。
「疲れるから」「面倒だから」って、会話のシャッターを下ろしていては、変わるものも変わらないわ。
あなたは「平和を守っている」つもりかもしれない。けれど、それは二人の関係への「期限切れ待ち」と同じこと。言葉という栄養を与えなければ、愛なんてあっけなく餓死しちゃうわよ。
だから、何でもいいから会話を増やす。おはよう、おやすみ、ありがとう、ごめんなさい。こんな基本の言葉からちゃんと言う。
なぜ友人夫婦が仲良く見えるか、考えてごらんなさい。めちゃくちゃコミュニケーションをとってるでしょ。仲が良いって、コミュニケーションが頻繁なことよ。話題がないとか言わないで。無理にでも振るの。
あと、コミュニケーションをとるときに大切なのが「共体験」。一緒に何かを体験して。すると、それに関して自然と会話が増えるから。
一緒にテレビを見るとか、新しくできたお菓子屋さんのケーキを一緒にシェアするとか、何でもいいの。
今言ったことを、今日からでもいいから、少しでもいいから実行して。まだ大丈夫なうちにね。
【Tomy先生のアドバイス】
今の二人は「無関心」という危機的状況よ。 「話題がない」なんて言い訳せず、無理にでも話しかけて。 同じケーキを食べるだけでも、会話の糸口になるわ。
ここまでの記事では、人生の焦りや「理想の人生」という思い込みとの向き合い方、そして会話が減った夫婦関の係性についてご紹介しました。つづく関連記事では、更年期の不調との向き合い方や、「空の巣症候群」と呼ばれる心の変化についての話をお伝えします。
つづき>>「女性として終わってしまった感覚」…50代、体と心がバラバラになる「説明できないつらさ」は更年期のせい?【精神科医がアドバイス】
■著者略歴: 精神科医Tomy
1978年生まれ。東海中学・東海高校を経て、名古屋大学医学部卒業。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局に入局する。日本精神神経学会認定専門医。精神保健指定医。39万フォロワー突破のX(旧・Twitter)が人気で、テレビ・ラジオなどマスコミ出演多数。著書『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)に始まる「1秒シリーズ」は、36万部突破のベストセラーとなった。『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)の小説シリーズも反響を呼ぶ。『精神科医Tomyの気にしない力』(だいわ文庫)、『精神科医Tomyが教える50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。



