
「更年期だから仕方ないのかな…」「子どもが巣立ってから、何を楽しみに生きていけばいいのかわからない」。そんなふうに、体の不調や人生の節目で、言葉にできないモヤモヤを抱えている人も少なくありません。
精神科医のTomy先生は、身体に異常が見つからない不調には、心が影響している可能性があることや、子どもの自立後に訪れる「空の巣症候群」について、精神医学の視点からやさしく解説しています。
本記事では、Tomy先生の著書から、更年期の不調との向き合い方と、人生の転機に感じる虚無感を受け止めるヒントをご紹介します。
※本記事は書籍『うつ未満 。 「大丈夫」と言えない日の相談室』(精神科医Tomy)から一部抜粋・編集したものです
体と心がバラバラになる「説明できない」つらさ
Q.女性として終わってしまった感覚――更年期の不調との向き合い方
(50〜59歳/女性/りかくるさん)
更年期なのか、ホットフラッシュと倦怠感に悩まされている。婦人科では「よくあること」で片付けられた。漢方薬も効果を感じない。
仕事中に急に汗が噴き出して恥ずかしい。イライラも増えて、家族に当たってしまう。でも「更年期だから」という言い訳もしたくない。
夜中に目が覚めて、そのまま眠れないことも。疲れているのに眠れない矛盾。肌荒れもひどく、化粧のノリも悪い。「女性として終わった」気がして悲しい。でも誰に相談していいかわからない。
同年代の友人は「私は平気」という人ばかり。この体調不良がいつまで続くのか、不安でたまらない。
仕事も家事も手につかないけど、「怠けている」と思われたくない。心と体がバラバラになっている感覚。これは「仕方ない」と諦めるしかないのでしょうか?
一人で抱え込まず、専門家に頼りなさい
A.身体の不調が前面に出る「仮面うつ病」というものがあるわ
症状が改善しないのなら、主治医の先生に何度か相談すべきだと思うわ。あと、更年期障害は、すぐに一発で治るというものではないから。
また、ずっと通っていても特に変わらないのなら、他の産婦人科を考えてもいいかもしれないわね。これ以上は、専門じゃないので、ちょっとコメントは差し控えるわね。
というわけで、ここからは精神医学的な観点から、お話したいと思います。身体の症状で悩まされているのに、特に異常が見つからないとき、精神的な問題から来ていることがあるの。
たとえば、うつ病でも「仮面うつ病」と言われるタイプは、頭痛、肩こり、眩暈、動悸、胃腸症状など身体の症状が前面に出てくる。
また「身体表現性障害」と呼ばれる不安障害の一群は、身体的異常がないのに、精神的な理由から様々な症状が出てくるわ。ありとあらゆる症状を起こす可能性があります。
だからアナタも精神科を一度受診する意味は充分にあると思うわ。不安感・倦怠感や、意欲の減退、睡眠の異常も出ているので、尚更よ。
こういうときは何を考えてもネガティブになってしまうから、あれこれ考えず、一度受診してみてください。
【Tomy先生のアドバイス】
身体の異常がない不調は、心がSOSを出しているのかも。「仮面うつ病」や「身体表現障害」の可能性もあるわ。一人で抱え込まず、精神科で専門家の力を借りてみて。
▶子育て後の「人生の空白」がつらい――「空の巣症候群」とは?
子供が巣立ったあとの「静寂」が怖くてたまらない
Q.「お母さん」を卒業したら、私には何も残らなかった
(50〜59歳/女性/お魚くわえたどら猫さん)
子供が就職し、母親としての役割が終わった。これから何を生きがいにすればいいのか。
夫との会話は事務連絡のみ。趣味もなく、資格もない。今更働くにも、ブランクが長すぎる。友人は孫の話で盛り上がっているけど、うちの子供たちは結婚の気配もない。
親の介護も現実味を帯びてきた。自分の健康不安もある。老後資金は夫任せで、具体的な金額も知らない。このまま夫に依存し続けていいのか。でも今更自立なんてできない。鏡を見ると老いた自分にため息。
若い頃の夢は何だったっけ。
残りの人生、ただ年を取るだけなのか。
何か始めたいけど、エネルギーが湧かない。「人生折り返し」どころか、もう終盤な気がする。せめて穏やかな老後をと思うけど、この虚無感を抱えたままでは難しい。Tomy先生、子育て後の人生の空白を、どう意味のあるものに変えればいいですか?
まずは休みなさい。やりたいことは後からついてくる
A.それは「空の巣症候群」。脳が疲れているだけよ
「空の巣症候群」という言葉を聞いたことがあるかしら?子供が自立して、子育てが一区切りしたときに訪れる、虚無感に囚われた状態に付けられた名称よ。雛が巣立ったあとの「空の巣」を眺める母鳥のイメージね。
この言葉は決して病名ではないのだけど、子供が自立したのがきっかけで、うつ病になる方もいらっしゃるわ。人によってはそれぐらいのストレスなのよね。
子育てに限らず、大きな問題に取り組んでいるうちは、気持ちがそっちに向かうので安定するのよ。でも大きな問題が解決してしまうと、今度は生きがいを失ってしまう。今のアナタはきっとそんな状態なのよね。
ただ、どんな環境でも人間は慣れる。今は子供が身近にいないのが寂しいかもしれないけど、それが当たり前になってくるのよ。だから、無理に「何かしなきゃ」と慌てなくてもいい。
今アナタがクヨクヨ考えてしまうのは、本当に沢山の問題があるわけじゃないの。一時的なストレスによって脳疲労を起こし、考え方がネガティブになっているのよ。だからいろんな「問題」が気になってくる。
まずやるべきことは、クヨクヨ考えないこと。休むこと。元気になったら、「今やってみたいこと」を考えてみることね。
若かろうが、そうじゃなかろうが、常に「今」はある。今に焦点を当てれば、年齢なんて問題じゃないのよ。
【Tomy先生のアドバイス】
虚無感には名前がある。「空の巣症候群」よ。脳が変化にびっくりしているだけ。まずはゆっくり休んで。元気になれば、年齢に関係なく「今」を楽しめるわ。
ここまでの記事では、更年期の不調との向き合い方や、「空の巣症候群」と呼ばれる心の変化についてご紹介しました。つづく関連記事では、周囲と比べて焦ってしまう気持ちとの向き合い方や、会話が減った夫婦の関係性についての話をお伝えします。
つづき>>会話なし、レス1年以上。相手の好きなところも忘れてしまい…。30代夫婦の「危機的状況」を脱するカギは?【精神科医がアドバイス】
■著者略歴: 精神科医Tomy
1978年生まれ。東海中学・東海高校を経て、名古屋大学医学部卒業。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局に入局する。日本精神神経学会認定専門医。精神保健指定医。39万フォロワー突破のX(旧・Twitter)が人気で、テレビ・ラジオなどマスコミ出演多数。著書『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)に始まる「1秒シリーズ」は、36万部突破のベストセラーとなった。『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)の小説シリーズも反響を呼ぶ。『精神科医Tomyの気にしない力』(だいわ文庫)、『精神科医Tomyが教える50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。



