
雨が降る前になると頭が痛くなる、天気が崩れると気分が落ち込む…。そんな「気象病」は現代人だけの悩みではないかもしれません。
天気痛研究の第一人者で、日本初の「天気痛・気象病外来」を開設した佐藤純氏は、天気が人の心身に与える影響は古くから知られており、歴史上の人物たちの行動にも関係していた可能性があると考察しています。
本記事では、佐藤氏の著書から、卑弥呼や織田信長、忠臣蔵で知られる浅野内匠頭らにまつわる逸話を交えながら、「気象病」と歴史の意外な関係について紹介します。
※本記事は書籍『1万人を治療した天気痛ドクターが教える 「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(佐藤純:著/アスコム)から一部抜粋・編集したものです
天気と体の関係が歴史を動かしたともいわれています
気象病の症状の有無は、生まれつきの体質にも左右されます。そしてそれは、現代に限ったことではありません。天気が人間の健康に与える影響については、古くから指摘されてきました。
実際に、天候によって体調が変化することに言及した平安時代の書物も残っています。
そしてここからは私の個人的な見解ですが、時代によっては気象病になりやすい体質の人が、それをひとつの武器にして活躍したケースもあると考えています。
たとえば「鬼道(きどう)」を用いて邪馬台国を治めていたとされる女王・卑弥呼(ひみこ)。鬼道については諸説あるものの、その能力のひとつに「天気を読むことができる」ことも含まれるそうです。
気象学が発達していなかった時代、天気を読める人は未来のことを予測できる神聖かつ神秘的な存在でした。
もしかしたら卑弥呼も、「古傷がうずくから明日は雨が降る!」といった予言をズバズバと的中させて、求心力を得ていたのかもしれません。
織田信長も浅野内匠頭も実は気象病持ちだった!?
ほかにもこういった考察は複数あり、戦国武将の織田信長は、実は片頭痛持ちだった可能性があるといわれています。
今川義元軍との大合戦となった桶狭間(おけはざま)の戦い。
信長は少数精鋭部隊で雷雨の中敵陣に突入するという奇襲作戦を決行し、これに勝利したとされていますが、あらかじめ雨が降ることをわかっていたという説があるのです。
雨に対する準備をしている軍としていなかった軍を比べ、どちらが有利に戦いを運べるかは言わずもがな。もしこれが本当だとしたら、信長の戦略家としての素質は抜きん出ていたといえるでしょう。
また、忠臣蔵で有名な赤穂事件も、気象病との関連性が指摘されています。
吉良上野介(きらこうずけのすけ)に斬りつけた浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は、片頭痛や胃痛持ちで、体調の影響でいきなりキレる性格だったそうなのです。
事件の日の2~3日前あたりから天候が不順だったことは歴史書に記されていますので、もしかしたらそれが原因で浅野の胃が痛んで攻撃的になり、吉良への怒りのパワーを増幅させて事件を起こしたという可能性もあるのです。
気象病はまだまだわからない点も多く、そのメカニズムの完全解明には至っていませんが、歴史上の有名人物が気象病持ちで、それが彼らの行動になんらかの影響を及ぼしたという見解は、研究者としてまったくの見当違いではないと思っています。
気象病があったからこそ、歴史が動いたのでは⁉ そんな想像をめぐらすのも楽しいものです。
ここまでの記事では、気象病と歴史の関係について紹介しました。つづく関連記事では、「気象病が発症しにくい土地」についてお届けします。
つづき>>ハワイに行くと「頭痛が治まる」ってホント⁉ 雨の日に不調な人へ、天気痛ドクターがすすめる「転地療養」とは
■著者:佐藤 純(さとう・じゅん)
天気痛ドクター・医学博士。日本慢性疼痛学会認定専門医。中部大学生命健康科学研究科教授、愛知医科大学客員教授。1958年福岡県生まれ。30年以上にわたり、気象と痛み、自律神経との関係を研究。1983年に東海大学医学部を卒業後、名古屋大学大学院で疼痛医学、環境生理学の研究をスタート。1987年、米ノースカロライナ大学に留学し、慢性疼痛と自律神経系の関係について研究を行う。名古屋大学教授を経て、2005年より愛知医科大学病院・痛みセンターで日本初の「天気痛・気象病外来」を開設。天気痛研究・診療の第一人者として「ためしてガッテン」「あさイチ」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディア出演も多数。2020年には株式会社ウェザーニューズと共同開発した「天気痛予報」をリリースし、注目を集めている。主な著書に『天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法』(光文社)、『まんがでわかる天気痛の治し方』(イースト・プレス)、『「雨の日、なんだか体調悪い」がスーッと消える「雨ダルさん」の本』(文響社)、『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。



