1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。前編記事『急に肌寒くなってきた「白露」の時季に、積極的に食べておきたい「意外すぎる」白い食材の名前とは』に続く後編記事です。
まさかの組み合わせ!「鮭と梨」、どんな料理になるの??
2つ目も肺の機能を補うレシピとして「梨&大根&杏仁の鮭のみぞれ煮」を紹介します。白きくらげに続いておススメの食材は“梨”です。日本の梨はみずみずしくて甘いので、そのまま食べることもおススメですが…梨の果物感を残しつつ、食材としても馴染むように、大根おろしの“みぞれ煮”に入れてみました。梨の食感が残るように少し大きめにしているので、“あられ混じりのみぞれ”のような感じのレシピです。
作り方は、生鮭(2切れ:約200g)に塩をふって10分置きます。出てきた水分をペーパータオルでふき取り、骨を取り除いて3等分にして表面に片栗粉をまぶします。梨(1/2個)は皮をむいて5mm角に切り、大根(1/3本)は皮をむいてすりおろします。梨と大根をボウルで混ぜ合わせ、杏仁霜(あんにんそう/きょうにんそう)(大さじ2:約20g)を加えて混ぜ合わせます。
フライパンにごま油をひき、鮭の表面に焦げ目がつくように中火で揚げ焼きにした後、水(200ml)・白みそ(大さじ1/2)・みりん(大さじ2)・酒(大さじ1)・りんご酢(大さじ1)・鶏ガラ粉末(小さじ2)・すりおろし生姜(小さじ1)を加えて煮立たせ、中火で5分煮込みます。これに、梨&大根&杏仁の“あられ混じりみぞれ”を加えてさっと煮込みます。器にもりつけて、上から小ねぎをかけたら出来上がりです。
鮭は「身体に気を補って、咳を鎮める」働きが期待でき、“あられ混じりみぞれ”の梨は「身体に潤いを補って、乾燥と咳を鎮める」働き、大根は「身体に潤いを補って、上がった気を降ろす」働き、杏仁は「身体に潤いを補って、咳を鎮める」働きが期待できます。先ほど紹介したように「コホンといったら肺の気が上がっている」ですので、“あられ混じりみぞれ”はおススメです。
食材が持つ効能面でもおススメですが、鮭の旨味・塩味を梨&杏仁の甘みが引き立ててくれる組合せレシピです。しょうゆで味をつけた試作も行ったのですが、せっかくの“白い”あられ混じりみぞれが茶色になってしまって…。「白露」におススメのレシピですので、白みそ・みりん・りんご酢で味を作ってみました。少しずつ空気の乾燥が近づいて来ます。梨を見かけたら是非作っていただけると幸いです。
白きくらげはスイーツとしても本当に優秀!たとえば旬の果物と合わせて
先ほど紹介した白きくらげは、料理食材としてだけではなくスイーツ食材としても使えます。スイーツとしてのおススメレシピは「白きくらげのはちみつ漬け」です。白きくらげは約1分湯通しをして、冷蔵庫ではちみつと一緒に2~3時間寝かせます。こりこりとした食感で、この時期におススメです。今回は上にクコの実をのせて、シャインマスカット、さつまいもを合せました。さつまいもはゆでて、白きくらげと一緒にはちみつ漬けにしました。
さつまいもは「身体に気と潤いを補い、腎のコンディションを整える」働きが期待できます。呼吸のパートナーである「腎」にとって頼もしい存在ですし、腎を補うことが出来るのは更年期対策としてもおススメです。なにより、甘くて美味しいというところが嬉しい食材です。
大根はさっと干してから使うと甘みがぐんと増します
先ほど紹介した、この時季おススメの白い食材の大根。山芋などもそうですが、1日天日干しをするだけで水分が抜けて甘みが増します。TOP画像のように厚さ5ミリ程度にスライスして朝から干し始めて、夜ごはんの食材として使います。切り干し大根のように完全に水分が抜けきるまでは至らないので保存食にはなりませんが、大根の自然の甘みが凝縮されるので、スープに入れたりおかゆに入れたりと活躍の場が増えます。丸1日干すのは少し手間かもしれませんが、手間をかけた分の幸せを甘味から感じられます。食が進まない時は大根を生で食べるのがオススメです。大根おろしは消化を促進してくれるので、食べたモノを胃・小腸・大腸へと降ろしてくれます。結果的に大腸の働きが良くなると、表裏関係の肺のコンディションにも良い影響があらわれます。
はちみつの見た目は透明なのですが、中医学では「白色」と捉えています。「白露」の暦を説明した際に「透明のしずくを白色と表現するところに風情を感じる」と申し上げたのですが、通ずるところがあるのかもしれませんね。はちみつと乾燥と言えば、北京ダックを思い出します。北京の緯度は日本の秋田県・岩手県とほぼ同じですが、内陸のため基本的に乾燥しているそうです。北京ダックは丸鶏にはちみつを使った飴を何度もかけてコーティングするのですが、秋の乾燥ではちみつ飴が乾きやすくなると何度も塗り重ねやすくなるそうです。空気の乾燥の度合いが深くなるほど、はちみつが塗り付けやすくなって北京ダックが美味しくなる。しかも身体に入ったはちみつは身体を潤す働きをしてくれます。乾燥が深くなるという身体にとって少し不利なことを、逆手に取って身体に有益な工夫にしている北京ダック。「自然を理解しながら自然に負けない先人の工夫」のことを思い出しては、いつも感心しています。
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